天草エアライン機内誌 9月号、「ここにいるから」海ゴミ(釣り糸)が絡まって苦しんでいるイルカの経過報告 悲劇は今まさに、起きています

天草エアライン機内誌  9月号、「ここにいるから」海ゴミ(釣り糸)が絡まって苦しんでいるイルカの経過報告 悲劇は今まさに、起きています

熊本県天草市には、イルカの飛行機で有名な天草空港があり、みぞか号というニックネームのついた飛行機が就航しています。その機内誌に、月に1回、ニュースレターの寄稿をしております。

天草にいる野生のイルカのこと、そしてイルカが住める環境のことなど、その価値が多くの人に伝われば嬉しいです。


今回は、ケガイルカについてのレポートです。

このイルカには、らんちゃん、という名前を付けました。
理由は、このイルカ1頭を助けることはできないけど、尊い命から私たちは学ぶ(Learn) 必要があるからです。英語のラーンという意味をこめました。

2月の時点で、一度、記事を投稿しました。
https://dolphin-lab.com/2023/02/28/post-3342/

詳細な経過レポートは、「ここにいるから」の下に続けています


天草エアラインの記事はこちらです

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正直、こんなに頑張ってくれるとは想像もしていませんでした。

2月の頃のらんちゃん 体表面の糸がつっぱっているのがわかります

1月に発見し、写真におさめることができたのが2月になってからでした。

3月22日① まだ背びれも体幹もしっかりしています 
3月22日② 反対側からみた様子 海藻がからみ始めています
4月23日 背びれの食い込みがひどくなってきています 海藻はあったり、なかったり
5月24日① お母さんイルカはいつもぴったり寄り添っています
5月24日② 背びれの食い込み部分 背びれが左側に傾いてきました
5月24日③ 左目にも糸が食い込み始めました おそらく失明しているでしょう
6月7日 発見から半年 泳ぐこともままならないようになってきています
7月11日① 背びれが1/3ほど千切れ、倒れてきました 糸が緩むことがありません
7月11日② まだ生きている、、と生存確認はできるものの、胸が締め付けられる思いです
8月27日① 背びれはむしろ泳ぐ枷(かせ)になっていそう
8月27日② 台風6号(8月8~9日)を生き延びました
9月3日 

らんちゃんの悲劇は9か月目に入りました。

この9か月間の情報として

・観測できるのは、群れのなかにいるタイミングであり、完全にはぐれてはいるということはない
 (見つけられない日も多いので、どの程度群れに同行できているのかは不明)

・お母さんと思われるイルカがいつも寄り添っている

・体は大きくなっているものの、尾びれなどは痩せている

・泳ぐスピードはなく、とくに尾びれの上下運動に制限がある

・浮上しているほうがつらいのか?呼吸を1,2回したら潜行し、なかなかあがってこない
(群れのなかにいても、その姿を確認できるチャンスは少ない)

・エサを食べているのか、哺乳だけなのか不明

などがあります。


実際に観光客の方々も気が付く人がいます。でも一瞬なので、事情がわからずモヤモヤすることでしょう。その中で、調査室(ラボ)宛てにメッセージをくださる方もいらっしゃいます。

夏休みイルカプログラムでは、この問題と現状について解説をしました。それを学んだうえで、実際に海でらんちゃんに遭遇した日もありました。

この現状について、皆さんはどのような「心の動き」がありますか?

長くなってしまったので、次の投稿に続きます